2021年 11月の法話

『仏教の母なる山。比叡山延暦寺』

1年365日のうち約200日以上、比叡山ではいろいろな法要が行われています。ふと考えたのですが、これだけの法要を行っている本山というところはすごいなーと感心しましたら、考えてみれば比叡山は昔から仏教の母なる山と言われておりました。
本日このお話をさせて頂くのは、今年6月4日が比叡山を開かれた伝教大師様が亡くなられてからちょうど1200年目に当たる年になるため、5年前からいろいろな準備をしてきたのですが、コロナで催しが全て駄目になってしまいました。せめてこの場所を借りて、1200年の意義をお話させて頂きたいと思います。

仏教の母なる山、比叡山の教えは5つあります。法華経、南無阿弥陀仏、座禅、高野山と同じ真言密教、そしては戒(戒律の戒)です。
もともと日本に仏教の戒律が入ってきたのは奈良になりますが、その戒律はお坊さん専用の戒律でした。男性のお坊さんで250の戒律。女性の尼僧さんでその倍、500の戒律があったと言われており、非常に細かく厳しい戒律でした。それを一般の人に当て嵌めたらどうなるのだろう、誰もこんな戒律は守れない。そこで僧侶と一般の人と両方に通ずる戒律を作った方がいいのではないかということで、真俗一貫の戒律を打ち立てた人物が比叡山を開かれた伝教大師様になります。

伝教大師様の戒の話は難しいので上手くお伝えできないのですが、今日に置き換えてお話しますと、目の前にいる皆様はコロナ予防のためにマスクをされていらっしゃいます。こんなにマスクをしてくれているのは日本くらいです。何故日本人はこんなにルールを守れるのでしょうか。実はその元にあるのは伝教大師様の日本の戒律なのです。
「ルールを守って悪いことはしない。」「人には親切にしよう。」「人様のために力になろう。」この3つならば、お坊さんであっても一般の人であっても守れるのではないかということで、日本の戒律は比叡山で生まれ、1200年たち日本中に浸透していきました。だから我々が今こうしてルールを守っていけるのは、戒の元が我々の中に染み込んでいるからです。例えば、悪いことをするとバチがある、という気持ちです。
日本人はルールを守る。日本人は親切だ。人に優しい等といろいろな海外の方に言われますが、その元になったのは日本の仏教の戒なのです。

仏教にはいろいろな教えがありますが、その中に戒があります。どれが良くてどれが良くないということは一切ありません。全てがそれぞれ正しく、それぞれの人が自分にあったものを選んで頂ければ宜しいかなと思います。

以上を持ちまして、11月の法要を終わりにさせていただきます。