2018年 2月の法話

『感謝の気持ちを持つ』

 本日は三礼(さんらい)という言葉からお話していきます。
 一心頂礼十方法界常住三宝(いっしんちょうらいじっぽうほうかいじょうじゅうさんぽう)これは身も心も捧げて心から頂礼を致します。という事です。三宝とありますが、普通は仏・法・僧の3つになります。しかし、我々の本当の宝は1人1人違います。「一番大事な宝は何ですか?」と質問すると、一番多い答えは命です。そりゃそうですよね。命が一番大事ですよね。けれど我々人間は命よりも他のものを大事にしてしまう事がよくあります。例えば仕事です。仕事に一生懸命になり、働き過ぎで身体を壊し、命を二の次にしてしまう事があります。他には、お宝鑑定団に出てくるような物を命より大事にしている方もいます。
自分にとって本当の宝は何だろうか考えてみた場合、全く変わることのない、これだけは間違いないもの。大事な命でさえも仏様の教えに従えば諸行無常ですから絶対に安心できるものではありません。今現在大丈夫でも明日は一体どうなるかは分かりません。では我々はこの命でさえも明日は分からないのに、何を頼りにすればいいのでしょうか。
そう考えた時、我々にとって一番大事な宝は真理です。
どの時代になろうとも間違いないもの、真理こそが我々にとっての宝です。例えば目の前に1本の花があります。花を見ると綺麗だな、かわいいなと思いますよね。しかし花をずっと放置しておくと枯れてしまいます。枯れてしまうと綺麗だな、かわいいなとは思わなくなります。我々の心はそういうものです。けれども花は咲いて枯れていくのが真理です。これを仏様は言っています。綺麗な時がその花の全てではありません。枯れた後も花です。それを受け止める事が真理を受け止めるということになります。

3週間くらい前に体操の白井健三選手のお父様が群馬に来られました。その時に感心した事があります。それは、あれもこれも全部上手くならなくてもいい。なにか1つ上手くなれるものがあればいい。という教育をしたそうです。健三さんは鉄棒や鞍馬は苦手でしたが、床は抜群に上手だったそうです。
ここ最近20年間くらい日本の体操は低迷していました。ロシアや中国などに勝てませんでした。その原因は、その当時日本の選手の選び方は鉄棒や鞍馬や床全てが平均的にできる人が選ばれていました。そういう方をオールラウンダーと言うそうです。ところが、それだといつになっても世界に勝てませんでした。なので、オールラウンダーな方から上位2名を選び、残りの3人はその種目が得意な人を選ぶように変更しました。そしたら世界で勝てるようになり、団体優勝もできるようになりました。
これはさっきお話した宝に繋がっています。なぜかと言いますと、我々は自分の気持ちが一番大事なのです。よく、人の事を考えなさいと言いますが、結局は自分がどう思い、どうしたいかなど自分の気持ちが一番大事なのです。それが宝です。けれども自分がそう思っているという事は、相手もそう思っているわけです。相手も自分の事が一番大事。これがうまく重なり合わないと人と人との関わりがうまくいきません。ところが我々は自分が上手くやっていける事に感謝の気持ちがあると余裕が持てます。そうすると人を見てもあの人頑張っているなぁと見る事ができます。自分が余裕を持てるようになるには、自分の中に感謝の気持ちを持つ事が大事です。
白井選手のお父様が言っていました。白井選手が学校や練習から帰ってくると服を脱ぎ散らかし片付けをしないそうです。それを見てお父様はお母様になんとかするよう言うそうです。するとお母様は白井選手が片付けなかったものを、白井選手に片付けさせるのではなく、お母様が片付けてしまっていたそうです。それを見てお父様は、あの子はどういう子に育つのだろうと思っていたそうです。白井選手が合宿で共同生活をする事になった時、さぞかし周りの人に迷惑を掛けていると思い、息子がご迷惑をかけて申し訳ありませんと謝りに行ったそうです。すると、周りの人達から白井選手は自ら率先して片付けをしていると言われたそうです。健三選手は家でお母様が自分の片付けなかったものを片付けてくれていたのを見ていて、親元を離れたら片付けをするようになったのです。ですから子供は親の姿を見て育つというのは間違いないのだなと思いました。お父様が白井選手になんで自分のことを自分でやるようになったのかを聞いたら、家でお母様が片付けてくれていた事に本当に感謝していると言ったそうです。
やはり感謝というのは人と人をうまく繋ぎ合わせてくれる元なのではないかと思いました。
宝とは気持ちと言いましたが、気持ちの元に感謝があり、それが一番大事という事なのですね。
以上で2月の月例祭の法話を終わりにさせていただきます。