2016年 秋の大祭の法話

『世界の平和を願って』

30年前に当時のヨハネパウロ2世という教皇様が「宗教者が平和の為に何か出来る事はないだろうか」と提唱されたのを機にキリスト教をはじめとし、仏教、イスラム教、ヒンズー教など世界のいろいろな宗教者が一同に集り、平和の為にそれぞれのやり方でお祈りをするというサミットがイタリアのアッシジという聖地で行われました。
その後それは毎年場所を変えながら続けられ、今年が30周年ということで私は比叡山の91歳になられる天台座主猊下のお供としてイタリアに行ってきました。第一回目がアッシジで行われた後、ローマ教皇が第二回目は「東洋で行いましょう」と言われました。それで、東洋ならどこで行うのが一番いいのかとなり、最終的には日本の比叡山で行うことになりました。その後比叡山では、毎年8月4日に世界平和を願う祈りを独自に行うようになり、それは今でも続いております。この比叡山のお祈りも来年8月4日で30周年になりますので、現在のフランシスコ教皇に謁見してまいりました際に「教皇も是非比叡山にお足をお運び下さい」とお願いをしてまいりました。

皆さんもご存知のようにカトリックの本拠地はバチカンです。
今回私が伺った際に、バチカンの教皇様が特別礼拝をする部屋に通されたのですが、その部屋に行くまでは廊下ではなく7〜8ほどの部屋を通り抜けて行きます。その部屋はどれも素晴らしく、とにかく圧倒されました。そんな部屋を幾つも通り抜けようやく教皇様のお部屋に到着したのですが、部屋に入るなりフランシスコ教皇様は91歳になる日本の仏教の聖者が来られたと非常にお喜びになられ、しっかりと猊下手を握りました。そして「一緒に頑張ろうじゃないか」と声をかけておりました。

30周年の平和の祈りの中で、今回は私もアジアの平和のために声明を読み上げさせていただきました。やはりその中で一番感じるのはお互いがお互いの立場を尊重する為には、自分が偉くて他は偉くないという考え方では人と人はうまくやっていけないという事です。「自分も大事だけど、あなたも大事ですよ」という気持ちがないといけません。
お釈迦様がお生まれになられた時に7歩進んで右の手で天を指し、左の手で地を指し、そして天上天下唯我独尊とおっしゃられたそうです。これは平たく言うと、「私は仏です。だけれどもあなたも仏です。」という意味です。自分だけが仏ではなく誰でも仏になれるのだよと言う事をお釈迦様は唱えられました。それと同じような教えが仏教だけでなくキリスト教でもイスラム教でもヒンズー教でもございます。このような気持ちを大切にしながら相手に接する事ができれば、たとえ相手の宗教が自分とは違ってもその相手や宗教を尊重できると思います。
30年前に当時のローマ教皇、ヨハネパウロ2世もこのような気持ちが世界平和の第一歩になると言っておられます。そしてその提唱から始まった世界平和を願う祈りは、世界中のいろいろな人種、宗教の方が集まって、なんとかテロや戦争、内戦、核のない世界を必死で祈るという会として今でも行われております。そんな事を皆様にご報告いたしまして、以上で秋の大祭の法要とさせて頂きます。