2014年 秋の大祭の法話

『真実と事実の差』

本日のお経の中でも出て来た九条錫杖(くじょうしゃくじょう) のこの錫杖ですが、長い柄の先に金物の輪がついた杖のようなものです。
これで歩く時に地面を叩きまと、金物の輪がぶつかり合って出る音で虫がよけていきます。つまり足で踏んだりして殺生をしないようにという意味合いがあります。もう一つは、我々にしみついている煩悩を祓うという意味合いがあります。ですから今日は大祭の法要で皆様の煩悩、あるいは災いを祓いましたのでどうぞご安心してください。
そして、お経の中での仏様の道つまり仏道というものは、まさしく真実の世界でございます。ところが我々が生きている世の中は事実の世の中です。事実と真実は実はかみ合いません。今目の前にある事が事実だとしても、この事実が本当の真実かは別物でございます。本当の真実かどうかを決めるには、仏様に頼む心が必要です。
我々はついつい自分で何もかもしようとします。しかし、自らやる事には限界がある事は言う迄もありません。同時に我々はみんな心を持っています。その心は毎日千々に乱れます。ちょっと人に何か言われるとむしゃくしゃしてみたり、何かを見て腹を立てたり、悲しんだり喜んだり。1日の内に我々は何回そのような事があるでしょうか。そのような世界が実は先ほど申しましたように煩悩に支配されている世界です。従いまして、仏様の世界とはちょっと違います。そこで仏様の世界に一歩足を踏み入れると、その千々に乱れる心が落ち着いてまいります。
仏様の世界に入る道というのは、これはまず仏様を信じる。ここから始まります。
この信じるという言葉を今風に申し上げますと、感謝をするというのが第一歩でございます。感謝をすることによって、自ら信じる気持ちが芽生えてまいります。そして仏様を信じる気持ちを持つと我々の気持ちの中のもやもや、そして悲しみが自然と収まっていきます。

今日皆様には錫杖で煩悩を祓いましたので、今後とも皆さん一つこれを縁として仏様の世界に一歩、二歩踏み込んで頂きますよう。そして最後になりますが、感謝感謝の気持ちをもって暮らして頂きますようお願い致します。
以上で観音の法要を終わりにさせて頂きます。ありがとうございました。