秋の大祭の法話
『Give and Take の神様』

今日はお足下の悪いなか、大勢の方に秋の大祭にお集り頂き誠にありがとうございます。
仏様の世界では、雨というのは天からの贈り物という事で非常にありがたいものとされております。ですからあいにくの雨模様ですが、一つそんな気持ちでお過ごし頂ければと思います。

まず始めに、本日お唱えしたお経について簡単にご説明させて頂きます。
最初にお唱えしたのは、『四奉請』(しぶじょう)というもので、これは如来様、釈迦如来様、阿弥陀如来様、観音様、勢至菩薩様などにこの場所においでを願う為にお唱えしたお経になります。
また、このお経の冒頭に『散華楽』(さんからく)と書いてありますが、これはご供養の為にお花を仏様に捧げるという事になります。本日は紙の花びらを撒かせて頂きました。
これらをお唱えした事で、先ほど一緒にお経を上げている間は、皆さんと仏様とが一緒におられたという事になります。そして仏様は我々の読経を聞いて、またそれぞれの場所へ戻って行かれました。

 

また、四奉請以外にも、お唱えしたお経の中に諸天漢語讃(しょてんかんごさん)というものが表題にあります。これは今この場所に沢山の仏様に来て頂きましたが、それ以外の仏様に対して今来ている仏様を見守って下さい。同時に我々も見守って下さい。という意味合いでお唱えさせて頂いたものになります。このお経は声明(しょうみょう)というメロディーのあるお経になり、その中でもこの諸天漢語讃(しょてんかんごさん)は割合リズムのある調子のいいお経になります。

そして、本日も毎月の月例祭でも皆さんと一緒にお唱えしている観音経というお経ですが、これは実に功徳のあるお経でして、我々が心から観音様を信じて一言でも『南無観世音』(なむかんぜおん)とお唱えすれば、我々の苦難は解き放たれ楽になるという事が書いてあります。
ですから、観音様を信じるという気持ちが大切であります。しかしながら、我々の欲や煩悩など色々なものが邪魔をし、この世の中はなかなか自分の思う通りにはまいりません。

そんな時に思い出してほしいのですが、
英語には『give-and-take』(ギブ アンド テイク)という言葉があります。
takeは『ちょうだい。』 giveは『差し上げます。』という意味ですが、give-and-takeでは観音様に対してですと、ちょうだいが先になってしまいます。
そうではなく、giveが先にきてまずは差し上げますよというのが第一に来なければなりません。
では、観音様に何を差し上げたらよいのでしょうか。

お花を上げる、お線香を上げる、お供えものを上げるのもそうですが、まずは観音様に感謝をする。その『ありがとう』という気持ちを捧げる。
その後に初めて、観音様からご利益が贈られてまいります。

今こうして、私を含めここにお集りの皆様も元気に無事に暮らしております。これは勿論皆さんのお一人お一人の努力もございますが、大きな目に見えない力によって守られているおかげでもあります。
ただ我々が気がつかないだけで、実はそれが観音様のお力なのです。
そして、その観音様に自分は守られていると分かった時に初めて、観音様のお力というものは目に見えてまいります。

我々は最初から多くを望むのではなく、まず自分がこうして無事に生きていられる事に対して感謝の気持ちを持つ事。それで幸せに過ごして行く事が出来るのだと思います。

以上で秋の大祭の法要を終わりにさせて頂きます。